生物多様性を利用した農作物生産 〜IBM農業に基づいた自然栽培の実践研究〜

上原 拓也
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 任期付研究員)

2016年9月15日木曜日

光で天敵を集め、害虫を減らす

紫色LEDの照射で天敵を集める

昨日付で、農研機構から「光で天敵を集め、害虫を減らす技術を開発」が報道発表されました。
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/071030.html

詳細は、上記webページにありますので、ここでは概要をざっくり3行でまとめると、

  1. 天敵昆虫ナミヒメハナカメムシは、一般的に害虫を寄せ付けにくい紫色光 (405 nm) に強く誘引される。
  2. ナスの露地圃場で紫色光を点灯させると、野外でもナミヒメハナカメムシの誘引が確認できた。
  3. さらに、紫色光を点灯した圃場では、ナミヒメハナカメムシが害虫のアザミウマを捕食し、アザミウマの数が半減した。

という驚くべき結果が得られました。

天敵を用いた害虫防除は、農薬に代わる技術として期待されています。
しかし、天敵は生き物、思った通りに害虫を退治してもらうためには、
工夫が必要です。

そこで今回は、「走光性」という生物が光に集まる性質を利用して、
天敵の行動をコントロールすることを試みました。

すると、紫色LEDを圃場で光らせることによって、
想像以上に天敵が作物に集まり、害虫を食べ、
そして害虫を抑えるということが分かりました。
ここで大事なポイントは、紫色光が天敵のみを誘引し、害虫を寄せにくいということです。

下記が掲載された論文です。
Ogino T*, Uehara T*, Muraji M, Yamaguchi T, Ichihashi T, Suzuki T, Kainoh Y, Shimoda M (2016) Violet LED light enhances the recruitment of a thrip predator in open fields. Scientific Reports, doi:10.1038/srep32302. (*equal contribution)
http://www.nature.com/articles/srep32302

この研究は修士学生の荻野くんが暑い中、圃場試験をとても頑張りました。

この研究と少し離れて、、、

今回の研究では、天敵昆虫のナミヒメハナカメムシと、
害虫であるアザミウマに焦点を当てました。
光照射は、この2者だけでなく、圃場やその周りの環境を含めた
農業生態系にも影響を与えているはずです。

実際に紫色光を照射した圃場では、アザミウマ以外の害虫が減ったり、
天敵昆虫よりも大きい捕食者が増えるということが観察されています。

しかし、紫色光照射よって農業生態系にどのような変化が起こったのかについては、まだ研究の途中です。

「ヒトと虫が共存共栄できる新しい農業」というのが、
私の子供の頃からの目標なのですが、研究を進めることによって、
この「新しい農業」を提案できるのではと思っています。
本財団から助成を受けている「生物多様性を利用した農作物生産」では、まさにそういったことを研究しています。

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